9/26/2014

恋はハワイの風に乗って 15


「もう、日本の『お土産文化』いいかげんなくなって欲しいわ」

そう海外旅行に来て酷く悩んでいた友人がいたけれど、ようちゃんも例にもれずに世話になっている人へのお土産を考えながら、ひたすらビーチでクーポン雑誌のページをめくっていた。

陽も落ちてこざっぱりとした頃、私たちはワイキキ中心部へ歩き出す。ようちゃんが行きたいというブティックをめざした。

彼女が友人へのお土産をうんうん唸って吟味している間、私はそのブティックの日本人女性店員に心惹かれた。日焼けした肌がとても美しい魅力ある女性で、私の好きなタイプであることは事実だった。『私の中の親父』が顔を出し、ついつい彼女に話しかけてしまう。

「綺麗に焼けていますね〜。もうどのくらいハワイ住んでるんですか?」
「シミを隠す為にさらに焼くという感じですよ。6年です」
「そうですか〜。いや〜、本当に綺麗〜」

そう、最初は普通に受け答えをしてくれた彼女だったのだけれど、私が必用以上にでれでれした顔で彼女に見入ってしまったせいか、途中で露骨に嫌な顔をして「どうしたんですか?(-"-;)」と突き放すように言い切り、突然私の心が折れた。

「?」

しゅんとした私にやっさんが注意を払ったけれど「嫌がられた。多分レズビアンのおばさんと間違えられたんだと思う。(´・ω・`)」と言い、もう一度彼女を振り返ってみたら、必死で顔を合わせないようにしている感じだった。

結局ようちゃんは買おうとしたドレスを支払おうとしてクレジットカードを忘れていたというダサイこともしたし、私たちはウエルカムでない客として店を出た。

「露骨に嫌な顔して『どうしたんですか?』はないと思わない?」

そうぶつぶつ言い続ける私に「あんた、根に持ってるわね」とおかま君が笑う。それからようちゃんに連れられてTシャツ屋を目指した。

あいかわらず決断力のない彼女だったし、私もTシャツにまったく興味もなかったので、どうでもいいような感じでアクセサリーなどを眺めていたけれど、「やっぱりいいや」という彼女に従って私たちは店を出た。

「やっぱりこういう店の人って、ばっと何枚も大量に買うお客が好きなのよね〜」

そう、どことなくしゅんとした感じでようちゃんが言う。最初はいろいろと彼女にアドバイスしていた日本人男性のオーナーが、私たちが出がけに  (・д・) チッ っというような表情をしたのを見逃さなかった。彼の態度でちょっと傷ついたみたいだった。




「なんだか、ワイキキの日本人店員ってやたら気ぃ短いと思わない? 昨日のブティックの彼女だって、いくらなんでもお客に喧嘩売るってないと思う」

そう、ようちゃんが言い、そういえば、と私も思い出した。

昨日、ランチの韓国レストランからの帰り道に『閉店セール』のポスターに釣られて入ったブティックのことだった。

NYファッションのような、あまりハワイらしからぬその服をさらりと流し、レジにあった革製品の財布をみつけておかま君に勧めたときのことだった。強盗にあって財布をなくした後だったから、リーズナブルな値段のそれにおかま君が買う気満々だったけれど、オーナーの日本人女性にまけてくれるようおかままるだしで絡んでいた。

「NYからやってきたけれど、服はダメですね。やっぱりハワイでビジネスやるんだったら不動産ですね〜」

そう、世間話をした後に「いやぁ、もうこれがギリギリなんです。儲けなんてないんですよ」とおかま君のプッシュに困った顔をしていたけれど、「そこをなんとかするのがイイヲンナってもんよ!」なんていうおかまのノリに Σ(-_-+)ピキッ ときたみたいだった。

「いーかげんにしないと本気でキレますよ…」

そう、彼女が言ったときに「?」と思った。大阪人だったら、まだまだ触りのノリの会話のところなのにもう切れるんかい?と私たちは一瞬おののいた。

「ま〜、解るわよ。アタシも客商売やってるから、シツコイ客も疲れるわよね」

冗談が通じない相手の反応にむっとしたおかま君がそう返した瞬間、「だったら!!!」とレジの女性が声を荒げ、そしてその後に続く言葉をどうにか呑み込んだ、という感じだったのだ。

「ひ〜… ( ̄_ ̄ i)」っと思い、そそくさと店を出て来たけれど、おかま君は酷く気を損ねた感じだった。何処に行っても独特のおかまのノリで友人関係を広げて行く彼だし、そんなに酷い絡みではなかったのだけれど、本当にビッチな店員だったのだ。




僅か二日の間にこういう目に3回も合うってどうよ?って思う。確かに私たちはゲテモノグループだけれど常識はずれなことをしてる訳ではない。ハワイに暮らしている人はきっとのんびりしてるんだろうなぁと思っていたけれど、ベイエリアの方が遥かにのんびりしてる感じがする

そんな疑問は数日後、ハワイ在住10年という女性と会話したところで解明される。

「そう、そんなめにあったの〜。そうね〜、この島で働いてる日本人って本当に観光客に疲れてるからね〜

そう説明した彼女は今ではアメリカ人の旦那さんと結婚しているからそうでもなくなったけれど、独身で日本人同士で寄り集まった時にはもう愚痴のこぼし合いしかしてないような状態だったそうだ。とにかくそれは恐ろしい数の日本人観光客がこの島に押し寄せる。それも外国に慣れていない依存心の強いタイプの人が多く、そういう客の相手にうんざりしている人が多いのだと。みんなが憧れるハワイに住んでいても、物価が高いから長い時間働かなくてはいけないし、その美しい楽しい島の恩恵に預かれる時間もないことからストレスも溜まる。そして『自分はこの島に住んでいるのだ』という観光客と自分を分ける特別意識があることも態度に出ているのだと。

そういえば、友人の姐御から紹介されていたハワイ在住の女性とアポイントがなかなか取れず、テキストのやりとりでのランチの誘いに「ごめんなさい、無理です!」と直球で返って来たことに驚かされ、更に「では夕食の機会は?」との誘いはスルーされていた私だった。そのことを告げると「特にね〜、不動産の人はクライアントが島に滞在中は、もう何を言われてもず〜っと奴隷のようにかしずいていて、自分の時間なんてない状態だから…」と彼女が苦笑いした。

もちろん私自身が彼女のクライアントだったらそのようなことはないだろうが、たかだか自分の後輩だからという理由で一方的に知り合いに会ってあげろと紹介する姐御の方にも無理があるとは思う。私だって、紹介された以上は姐御の顔を立てる為にもお誘いを入れておかないといけないという気にさせられるからお互いプレッシャーものだし。

「もう無理して予定を立てるのはやめましょう。結局はご縁がなかったということですよね。」

そう私が告げて、向こうも恐縮していたけれど、なんだか可哀想な気がした。私だって、いきなり知らない人がサンフランシスコに来るから案内してあげてと言われて面食らった経験は数えるほどある。海外在住の日本人なら誰もが経験していることだと思う。




もうすっかり記憶から飛んでいた事実だけれど、20代の後半の頃、とあるフランスの会社のバカンス村で日本人相手のPRとして働いていたことを思い出した。あの時、本当に毎日疲れていて、後ろから客に「すみませ〜ん」なんて声をかけられたときには、同様に Σ(-_-+)ピキッ  っときて、肩で大きく息を吸い込んでから思いっきりの作り笑いで振り返ったものだ。

バケーションの土地で仕事するって本当に大変なのよ。



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