9/12/2014

恋はハワイの風に乗って 8


夕べテスが日曜ミサに誘って来ていたので、チャーに今日の予定を尋ねてみたら、トレイルウォークに出かけると返して来た。私のダイヤモンドヘッドの写真に感化されたらしい。誰と出かけるのかと聞いたら一人だというので一緒に行きたいとお願いしてみた。それで、ちょっとしつこかったテスにしっかり断りを入れる理由が成り立った。

チャーは早朝約束通りの時間に赤いMINIを横付けにした。今日の彼は黄色い派手なシャツを来ている。どうやらカラフルな色が好みらしい。今日は初めてトライするトレイルだけどビギナーコースだから大丈夫だろう、と彼が説明した。トレイルの入り口がなかなかみつからず、見つかってもそこのスペースは駐車禁止になっているので住宅地にクルマを停めなければならず、ブレイクインされないかなと彼は異常に心配していた。なんでも、住宅地ではクルマを路駐している人が多いから、普段自分が停めているスポットに部外者が停めようなものなら、怒りでクルマを傷つけられる可能性が多々あるという。

そんなにオアフって物騒なのかしらと驚きながらも、とりあえずトレイルへの道を歩き出した。

「どこが初心者向けなのよ、この道!」と目を丸くしながら険しい山道を登って行った。チャーが「おかしいなぁ」と首を傾げながら手を貸してくれていたけれど、どうやら私たちは何処かで道を外れたらしかった。途中からは普通にはっきと分る道を歩く事ができ、美しい渓谷が眺められ、時折シャワーにも降られたけれど、直ぐに止むそれに気をそがれることはなかった。湿気の深い山の空気は気持ちが良かった。

往復5時間というその道のりの中間地点のピクニックテーブルまではかなり間があったし、それから頂上までの道のりも遠く感じた。最後は永遠と続く階段状の険しさで、さすがにその頃には泣きたい気持ちになった。チャーは信じられないくらいの汗をかき、かなりしんどそうだった。健康な状態ならどうってことのないその道のりも、癌治療から回復途中の彼にとったらそれなりのチャレンジだったのかもしれない。それでも途中ですれ違った人の中には、ローカルのおばちゃんもいたんだよな、と思い出す。彼女にできて私たちに登れない筈はない。

標高610mの頂上は辿り着いた時には雲に包まれていて何も見えずにがっかりした。が、後に風が吹いて霧が晴れると、島の両サイドの海が鮮やかに浮かび上がりそれは美しい光景だった。昨日のダイヤモンドヘッドには比べ物にならない満足感がそこにあり、私は溢れる達成感と共に自身の行動に誇りを思った。

下りの山道で私はトランスしている自分に気づいていた。最初は疲れのせいでハイになっているのかなと思っていたけれど、そうではなかった。まるでレイキをしているときのような状態になっている。山のエネルギーなのだ、と気づいた。海では感じないそれを、山で私は経験していた。クセになりそうなその感覚はとても気持ちが良かった。




汗だくでクルマまで降りて来た時には膝が震えていた。シューズと汗で湿った靴下を剥ぎ取ると裸足が気持ち良い。チャーは汚れたシューズや自分の足を用意周到にウエットティッシュで拭き取り、私の靴をエキストラのプラスチックバッグにしまってくれた。彼の気の効き具合には、再度ほれぼれさせられた。

お腹が空いたので、がっつりランチ食べるぞ〜と張り切ったけれど、Hawaii kaiの水辺のカフェでサンドイッチを食べたのは私だけだった。チャーはアイスコーヒーしか飲まない。私の軽い質問に、彼は味覚と唾液の分泌を失った後の辛さをとつとつと本音で話し始めた。「こうなると知っていたら、放射線治療は絶対に受けていなかった」そう語るそれはかなりの苦々しい表情だった。

「辛い。でも、世の中にはもっと不幸な人が沢山いる。だから、それに比べたら耐えられることだと思う」

そう言って、彼は15ヶ月をイラクの戦場で過ごした話をした。初日にチャーはミリタリーの病院でナースをしてるとさらりと告げていたけれど、私がそれを軽く聞き流していた。実はライフサポートを扱う専門(ICU)であり、オアフでは手術室で働く毎日らしい。イラクでは命を落としかけた危機一髪の経験もしたし、現地で傷ついた一般市民のケアもしたらしい。 死に近い環境とはそういうことだったのだ。それを話している間の彼の表情は怖かった。彼の膝は貧乏揺すりでずっと揺れていた。他の誰からも聞ける話ではなく、私は唖然とした顔で話を聞くしかない。戦争映画さえ見ることができない私にとってはさすがに食事がまずく感じたし、その経験が彼に与えた影響を思うと「あぁ、こりゃ一緒に過ごすべき相手ではないかも」と、今までの高揚が冷め、しゅるしゅると落ちて行く自分を感じていた。

チャーは人の顔色に敏感らしく、直ぐに私の表情を読み取り笑ってその話題を終了させた。その話題がなければ、彼はその辺にいる普通のおじさんと変りがない。

ゆっくりそこで話をしながら過ごし、時間を確認してレンタカーのオフィスを目指す。さすがに8時以降は走らない公共バスの不便さに参って来た頃だったので、オアフ6日目にしてクルマをゲットすることにした私だった。Yelpでとても評判が良いので、Smart Carのレンタルにした。一度このクルマを運転してみたいと思っていたことだし。チャーにそこに送り届けてもらい、Smart Car の乗り心地に戸惑いながらチャーのMINIを追い掛け彼の部屋に落ち着いた。湯船に浸かりたかったのだ。




「一緒にお風呂入る?」

湯船とタオルを用意して「じゃぁ、ごゆっくり」と言いながらドアを閉めかけた彼を確認してから、私からそう提案してみた。彼に誘われるのではなく、彼の紳士度を確かめたうえで次なるステップに進みたかった。

「私、裸、平気だし」

チャーは軽く驚いた表情を見せながらも「俺もシャイじゃないよ」と言って服を脱いだ。がりがりという程ではないけれど、やっぱり急激に痩せたそれが目に見える体型をしていた。男性にしてはウエストが細いな、と思わされた。

彼の部屋の2bed 2bathのそのコンドミニアムのマスターバスはとても広かった。浴槽も私たち二人が余裕で収まるほどの大きめのジェットバスだった。私は軽く身体をシャワーで流して浴槽に浸かったけれど、彼はシャワーで念入りに身体を洗い、そして全身に剃刀を当てていた。

「君のレイキは気持ちがよかったよ。特に足の肌に触れられているときとか嬉しかった」

トレイルウォークに向かう途中のクルマの中でそんな会話が始まった時、彼の脚に毛がなかったことを思い出した。チャーは毛が無い方が絶対的に清潔なのだ、と断言し、全身の毛を剃っていると打ち明けた。

「って、もしかして陰毛も?」
「もちろん」
「私は、レーザー脱毛したけれど、さすがに少し残したわ」

そして、彼はセックスをする相手は絶対的にエクスクルーシヴで自分だけと約束してもらうことを強調した。

「ま、ね。それは普通かもね」

子犬君との微妙な8年間を思いだす。分らなかったらそれでいい相手の性生活も、分ってしまったら萎えてしまった自分を知ったので、彼に同意せざるを得なかった。

「ねぇ、私の陰毛剃らせてあげようか?」

私の陰毛に対してチャーが何を言った訳でもなかったのだけれど、それが彼の好みなのだったら、こういう機会もそうないだろうと提案してみた。特に嬉しそうという訳でもなく普通にそれを引き受け、慎重に彼は私の陰毛を剃り始めた。クリの周りになったらさすがに怖くなったので、電動シェーバーに切り替えてもらい、それでも最終的には、ざらざら感がなくなるまで自分で剃り込むことにした。パイパンになったのも久々のことである。

湯船の中で初めてキスをした。子犬君のそれと比べて唇が大きい。19歳のときにちょっと付き合った彼のあの唇に似ているな、と遠い記憶が蘇った。抱き合っていちゃいちゃしていたけれど、直ぐにのぼせたのでベッドルームに移動することにした。白い肉厚のホテル使用のバスタオルも私の好みだった。

そして彼のイチモツは今まで知る中でも大きい方で、正直私をがっかりさせた。とても気に入った男がいたのだけれど、どうしても彼のサイズと私のサイズが合わなくて気持ちのよいセックスができないことから、付き合うことを諦めた経験が以前あったからだ。大きけりゃいいってものじゃない。その点、子犬君のそれは小粒でとても可愛らしくいつでもこりっと元気で私を限りなく満足させてくれていた。私たちの性的相性は抜群で、それ故に別れてもよりを戻すということを繰り返した8年間だったのだ。

「ゆっくりやれば大丈夫だよ」

そう言ってチャーは潤滑剤を使用してみようとしたが、以前子犬君が持っていたブランドを使用して炎症を起こした経験のある私は、その熱く燃えるような感覚にとたんにナーバスになり即洗い流してしまった。それからゆっくりと時間をかけ充分に自身が潤ったつもりでも、彼自身の先が入っただけでめりっと激しい痛みを覚えて悲鳴をあげる私がいた。




トライしたクリオウオウリッジトレイル

絶景を楽しむ青年達




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