9/21/2014

恋はハワイの風に乗って 13


「ところで、デートした男、どうだったのよ?」
「それがね、悪くないのよ」
「もう、やったの?」
「やったわ」
「さすがね。最初のデートで?」
「ううん、確か4回目のデートのとき」
「もうそんなにデートしたの?!今回はどうしちゃったのよ? で、よかったの?」
「デカマラで入らなかったわ。閉じマンで無理したから切れたわ」
「切れマンね。キレマンジャロね

そんな話をおかま君としているうちに『やっさん』が『ようちゃん』と共にアラモアナに現れた。普段サンフランシスコで遊んでいる相手が、いきなりハワイの地に現れるというのも不思議な感じがする。やっさんはこざっぱりと夏の出で立ちで可愛いおっさんだった。60過ぎには見えない。

「や〜ん、お久しぶり〜」

やっさんの連れのようちゃんとは確か10年前に一度顔を合わせているけど、もう顔は忘れていた。でも、やっさんからよく彼女の名前だけは聞こえてきていたので、何となく知っている感じはする。ようちゃんの反応も多分にそんな感じに見える。昔サンフランシスコに住んでいたという繋がりらしく、10年前のそのときも、旅行中でありながらあの頃私が借りていたアートスタジオのペンキ塗りをやっさんと共に手伝ってくれた、という奇特な女性だけれど、話らしい話をした記憶はない。確か私より10歳は年下だと思う。

ようちゃんの要望に従ってアラモアナでの最初の行動はビーチサンダルのショッピングだった。数件ショップを流し、ようちゃんはおかま君にもビーサンを買ってあげていた。

おかま君はそんな事件があって着の身着のままでハワイにやってきたというのにもかかわらず、いつもとまったく変わることなく、リズミカルな下ネタを連発していた。

「あなた、そんな事件があったなんて信じられないノリね」
「だって、どうしろというのよ? そんなことあったからって家で泣いてりゃいっていうの? アタシはね、それでも来よう、って思ったの。来た以上はもう楽しまなきゃ損よ!」

そう言い切ったおかま君の言葉は衝撃的であり、と同時にとてつもない尊敬の念を抱かされた。果たして私が彼の立場だったら、同じような選択ができるだろうか?

アラモアナショッピングセンターをざっと流し、それからそこから数ブロック歩いたところにあるようちゃんの同僚のお勧めとやらの韓国レストランにて美味しい冷麺を食した。店は空いていたけれど、お店の人の雰囲気はよかった。湿気のある夏の気候にぴったりの食事だった。




その後、二人しか乗れないSmartにやっさんが乗り、おかま君とようちゃんはバスでホテルに戻った。やっさんがフロントにてパーキングチケットを見せ、彼らが滞在している期間中のパーキング許可証をゲットしてくれた。チャーからワイキキのパーキングは高いと聞いていたし、実際Smartを借りた場所のパーキングのレートも最初の30分で9ドルとあったので、今後おかま君との行動中、どれだけのパーキング代を使うハメになるのかと懸念していたところ、何とも嬉しい発見だった。やっぱり私は『男とパーキング運はいい』のだと認識した瞬間だった。

ストリップの端に存在する『Aston Waikiki Sunset』はキッチンがあるコンドミニアムホテルだけれど、なかなか快適な空間だ。バスルームもリモデリングされ明るくて清潔な印象がある。後日に聞いた話では、誰かがうっかりシャワーカーテンをバスタブの外に出したままシャワーを浴びてしまい床を濡らしてしまったら、階下で水漏れがあったと苦情が出たらしい。そんなところからもワイキキ高層ビルの老朽化の実体を知ることができる。見た目だけでは解らない、ということだ。

キッチンテーブルの上には、やっさんたちが既に近くのコンビニで購入して来たおにぎりやら味噌ラーメンやらがあって笑った。ようちゃんがスーツケースに詰めて来たおつまみも積み重なっていて、もう既に『日本』を感じることができる。ここ一週間以上、一人で、またはチャーと一緒に過ごしていたハワイの色が突然変わったようだった。




夕食は、おかま君がハワイに行く前から大騒ぎしていた『とんかつ銀座梅林』に出向いた。予約をしていったにも関わらず外でしばし待つ形になり、そこに出迎えのクルマが来ていることから、やっぱり近くに駐車場を見つけるのはむずかしいのだろなぁ、と思いながら出入りする客を眺めていた。

「夜の分払ってくれればいいわよ」って、おかま君が昼の韓国レストランで私の分を出していたけれど、ディナーで彼は迷うことなく36ドルの特上の定食を頼んでいた。「やられたわ」ってジョークでかわしたけれど、2500ドルを強盗に盗られた後の彼だし、と思い、自分はクリームコロッケ定食を頼みとんかつを彼から貰った。あんなに分厚いのに口の中で溶けるような肉とさくさく衣のとんかつを口にしたのは生まれて初めてで、その値段を払うだけの価値はあると思わされた。日本に帰ることなくして、これを賞味できるというのも、やっぱりオアフ滞在の強みかもしれない。

昼と夜。4人で楽しい会食ができたわけだけれど、『美味しい』を気の置けない仲間とシェアできるのは、こんなにも幸せなのだ、とカハラハウスに戻るクルマの中でしみじみと思った。






ばかウマだった韓国冷麺

とんかつ銀座梅林の定食




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