5/02/2014

『成功者』とシンクロする嬉しさ


サンフランシスコ空港を出たら、日差しが眩しかった。日本でも散々素敵なお天気の毎日が続いていたけれど、やっぱりこちらの日差しは違う。空気が澄んでいるせいか、フィルターを通さないようなダイレクトな光という感じがする。予想よりも遥かに暑かった。なんでも年に何度かの、家にエアコンがないことを恨めしく思う真夏日が始まったらしい。砂漠からの熱い風が流れ込んで来る『Heat Wave』で、空気は通常以上に乾いていて鼻血が出るくらいだ。

タクシー乗り場で自分の番のクルマに乗り込んだら、ビニール製のシートはぼろぼろに裂けていた。運転席のダッシュボードも古くぼろぼろな感じ。日本の白いカバーが付いた清潔なタクシーを思い出して「あぁ、日本国外だなぁ」という気がした。『日本国外』と思ったのは、アルゼンチンはブエノスアイレスのタクシーはもっと酷かったから。そして思う。日本はなんて豊かなのだろう、と。

東南アジア人の運転手は私が日本人と知ると国の様子を知りたがった。外国人労働者が増えているというニュースには少し興奮した感じも見受けた。

「この辺はいいなぁ。サンフランシスコ市内に住んでいるけれど、ろくな仕事が見つからない。それでキャブドライバーさ。生活は苦しい」

そう愚痴をこぼす彼にどう応えたら良いものだろう。やがて私の住むゲイトコミュニティーに入ると「そら、まるでビバリーヒルズだ」と感嘆する。そんな誰もが羨むこの土地を私は離れようとしている。執着に執着を重ねた家だったけれど、日本帰国の間のある日、それがするりんと解けた。果たしてこのまま同じ気持ちを貫いて行けるのかどうかは解らないけれど。




アメリカの家は普段気づかない古いペンキのような独特の匂いを放っていた。私が帰って来るのに合わせて夫がお掃除メイドを入れていたのはキッチンの床から察することができたけれど、風通しをあまりしていないことが伺える。そういえば、この家を離れるときに『家の気』が悪いことに気づいていた。寒い冬の間の習慣と体調不良で、換気や掃除を怠っていたせいだった。いつもだったらすることなのに、今回は逃げるように出て来てしまった為自分のベッドのシーツを洗っておかなかったことを後悔した。冷蔵庫はみごとにからっぽのままで、そこまでの期待もしていなかったから、とりあえずシーツを剥ぎ取り洗濯しているうちにスーパーに買い出しに行く必用があった。

アメリカの生活に戻った違和感は、クルマを運転してスーパーに向かう頃にはもう消えていた。そして日本の生活の体感はまるで靄のように消えかかっている。2ヶ月近くいたのになんて持ちが悪いことだろう。

家の風通しをよくし、フレッシュなベッドに変わったところでもうぐらぐらになっていた私だった。帰りのフライト中は一睡もしていない。寝たら最後2週間くらい時差ぼけで悩むのは承知のことだけれど、勤めている訳でもないのでがっつり眠ってしまうにする。トイレや少しの食事はしたけれど、火曜日の午後にベッドインして、まともに生活をするために起きだしたのは木曜日の朝9時半頃だった。一体どれだけ眠ったことだろう? 寝過ぎで頭痛がするくらいだった。




記憶が新しいうちに、YouTubeでとあるTVの人物を検索してみた。飛行機で隣り合わせた彼は、今頃この彼とラスベガスでギャンブル三昧のことだろう。

座席に着いた時「こんにちは」と声をかけておいた日本人男性。「非常口の席だと脚が思い切り伸ばせて楽ですね」そう相手は話しかけてきた。iPadのKindleで読書をしていたので、それは最新のライトの方かと尋ねたところで、『電子か紙か』という話題になった。

買いたい本がなくても、本屋に行ってたら~っと背表紙を目で追うのが好きなんです。そうすると光っている本があるんですね。それを手に取ってみるとピンと来るところがあり、そういうのには大抵探していたメッセージがあったりするんです
「あ、僕、それ解りますよ」

それから私たちの会話はどんどん面白いものに変わって行った。最初は謙虚に身元を誤摩化していた彼も、安心していろいろと話しだす。最後には不動産をやってる、どうやら結構なお金持ちらしいことが判明した。「なんでこの人がエコノミーに乗ってるかな?」と思ったのだけれど、2週間前にいきなりTVに出ている友人から「8日間ラスベガスで豪遊しよう」と誘われてチケットを取ったら、エコノミーでもそれもビジネスにアップグレードにできない席を30万円で買うしかなかった、と説明する。

「ファーストクラスで85万っつーのもどうかなーとか思って、もういいや、と思ってエコにしたんですよ。それも、席替えを頼んでこの席に落ち着いたんです。そしたら、こんな楽しい旅になった。普通あり得ないですよ、飛行機の隣の席に座った人とこんなに息や考えがぴったり合ってこんな話できるの。そう出逢わないですよ。なんなの、ねーさん、キレキレだなぁ。これから僕が一緒に遊ぶ彼も同じこと言うんですよ」

あえてこの言葉を使わなかったけれど、とりあえず私たちが話していたのは『引き寄せの法則系』だった。彼はサラリーマンが性にあわず思いつきでEコマースに先駆けて着手したのでどんどこお金が入ってしまって、天狗になってしまい人間的に恥ずかしい人にもなってしまったし、金に群がる人々で人間不信になり鬱になって一度はリタイアしてしまったらしい。

「こっちの勢いがなくなると、もうね、潮が引くようにそういう人々は去って行きますよ。お陰で友達が誰だか解りました。もうしょうがないですね、僕はゼロか百の人間なんです」

先日私が書いたそのままの言葉を彼が口にするし、私とまるで同じ性格なので、なんというシンクロだろうと驚いた。

「で、今はお金の為じゃなくて『遊び』で仕事をしてるんです。実はね、僕、中学しか出てないんですよ。こんなこと起こるなんて人生面白いったらありゃしない」
「まぁ、なんて素敵なお話かしら!私、もしかして運が上がって来たかも!」
「いや、ねーさんはもともとそういう人ですよ。だってもう、オーラが違いますもん」

「何か成功する為にこれだけは、ってしてることあります?」
「あ、いや、もう、『自分は運が良い』って絶対的に信じること。悪口を言わないこと、くらいかなぁ」

彼がディカプリオの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の内容をめちゃ面白そうに話すので、それを観ていない私が機内映画にあったそれを観させてもらっている間だけは話をしなかった。見終わって感じたのは、結構彼もお金をぐわっと手に入れて派手に遊ぶことで共感したのだろうな、ということ。ドラッグとかはやったかどうかは聞かなかったけれど、お酒はかなり飲むみたいだ。




そんな訳で、帰りのフライトは『あっという間』という感じだった。お互い「今回は嘘みたいに短かったな~」と嬉々として言い合い、名前も交換しないまま別れた。彼の『富気』を浴びただけで充分だし、それにそんな成功者とシンクロするような会話を持てたことが、自身の運気上昇に確信を持てた感じで嬉しい。




さぁて、新しいステージが始まろうとしている。とりあえず、5月末のダンカンダンスのパフォーマンスに向けてリハが続く毎日となる。今週末は金曜から日曜まで3日連続のダンカンダンスのクラス+リハだ。この運動で時差ぼけも早く治ってくれるといいなという期待感大。





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