12/05/2015

バリのグリーンスクール


Yoga Barnで日曜の11時からあるエクスタティックダンスに参加するのもすでに3回目になった。

ダンスの後のベジタリアンランチバッフェでテーブルをシェアさせてもらったら、そこに座っている二人の女性はお互いに一人旅のようだった。他愛のない会話をしていたら、向かいの女性の木の実がついた紐のブレスレットが目に入った。

「あ、グリーンスクールの見学してきたのね?私ももらってきた」
「そうなのよ。よかったよね、あそこ」

同席していたもう一人がその存在を知らずして、異常に関心を示したので、それをしばし説明することになった。




先週のエクスタティックダンスで知り合ったMは、帰る予定を延ばして翌朝早くに連絡をしてきた。なんでも私を連れて行きたいところがあるらしい。

『Green School』と彼が行った時、シンクロだ、と思った。つい二日前にバリの見学地をリサーチしていた時にこの名前が飛び込んできて、ちょっと興味があるとは思ったけれどウブドから離れていたので深く内容を読まずしてパスしてしまったのが再度飛び込んできた、と思った。

Mがスクーターで迎えに来て、カフェでリサーチしてみるとウブドから南に30分ほどのドライブで辿りつけるとのことだった。しかしGoogle Mapを頼りに出かけても提示する場所にそれが見当たらず、かなり迷ってしまった。それもそのはず、それはメイン道路から外れたジャングルの中に存在していたからだ。




『Sustainability (サスティナビィリティ、持続可能な)』というこの言葉は、きっとこれからどんどんいろんな分野で耳にし、目に触れることになると思う。この地球はもう人間の欲に侵されて、そのあるべき姿を失いつつある。もう繁栄の時期をとっくに通り越して、衰退の時期に入っている。地球温暖化が叫ばれ始めた頃にピンとこなかった私達も、続く異常気象を肌で実感しているはずだ。

アル・ゴア氏が『不都合な真実』という映画でノーベル賞を受賞したことは記憶に新しいと思うけれど、当時はその映画のデータが不十分だとか嘘だとかで結構叩かれていた。しかし、あれから既に10年近くの時が経とうとしている今、地球が年々どのように変化しているかはもう明らかなこと。

この学校を創立したのはカナダ人でジュエリービジネスをしていたジョン・ハーディ氏。この映画を見て強い感銘を受け、このスクールを創立した。TEDというプレゼン番組に出演、ビジョンを訴え賞賛を浴び世界中から寄付が集まったらしい。

Sustainability Scienceとはその地球温暖化や大量生産の問題を解決すべく、持続可能な地球社会を築くべくシステムを研究する学問であり、このグリーンスクールは子供のうちからそれを意識した独自の教育方針を持ったインターナショナルスクールでプリスクールからハイスクールまでの子供達を教育するエコな施設である。

建築は全て竹でできており、壁のないオープンな教室が多い。独自の水力発電所があったり、ソーラーシステムがあったり、キャンパスの中に川が流れていたり泥んこ遊びができる場所もある。毎日ツアーがあって、見学者はこのスクールの環境とシステムを知ることができる。

幼稚園児くらいの頃から自分と世界との関わり方、そして自分が意見をもって生きるということはどういうことなのかを学んでいく

教室の後ろに子供達が学んだ作品が貼ってあって『Mindful / Not Mindful』という内容が書き分けられていた。これも大切にしていきたい言葉だ。Mindfulとは心に留めるという意味だけれど、多分に『意識的な生き方』みたいなものだと思う。日本語だったら『心ない言葉』というのが『Not Mindful』であるように、人に地球に環境に優しく生きて行くことを自分たちで考えて学んでいくのだろう。




「わぁ、ここでずーっと教育を受けてきた子供達がどんなことをする人間になると思う?」

ここの見学が終わった後、Mも私も相当に感動していた。私は45分と思っていた見学時間が2時間近くだったことに驚き、暑さで相当に疲労していたから早々にウブドまで帰らせてもらったけれど、Mはまだ少し欲求不満で翌日にまた戻ったのだそうだ。

翌日私は私でまた別な知り合いと出かけていたのだけれど、その彼にグリーンスクールの見学のことを興奮して話したら、反応は微妙だった。サンフランシスコで骨董屋を営むインドネシア人で、買い付けに来ているところでたまたま私と出会ったのだが、インドネシア人から見るスクールの存在はまた違うものがあるようだ。

物静かな口調で語る彼はあまりネガティヴなことを言いたがらないようなので、詳しくはわからない。ただ創設者のジョン・ハーディ氏のジュエリービジネスのやり方に問題があったとか、そのあたりは口を濁す。

そんなことを再度スクールを訪れていたMに話すと、彼はたまたまWifiがつながる場所でラップトップを使用していたら、隣で先生達がミーティングをやっていて、いろんな問題があるような響きだった。ちなみに、ジョン・ハーディ氏はこのプロジェクトで消耗しきって引退し、スクール運営から一切手を引いているとのこと。




もう一つ、その場を訪れてちょっと違和感を覚えていたけれど、その正体がわからなかった私にある感想を書いたブログがそれを教えてくれた。

スクールのカフェやその他の場で現地のインドネシア人が仕事をしている。子供が遊び、親がのんびりカフェでくつろぎ、その横で現地の人々が肉体労働をしている。他の私立学校では全てを保護者が一体となって行われていることが、ここでは現地人が働く人となっている。まるで植民地特権階級のような立場を当たり前と子供の無意識に与えて良いものだろうか?と。

多分に外国人のビジネスがこの地でサバイバルするには、インドネシア人雇用の条件があるのでやむを得ぬところなのだとは思うけれど、どんな環境であれ新しい理想を追求するにはいつでも大きな壁は立ちはだかっているのだとは思う。




世界中から注目されているこの学校への入学希望者は多い。お金を払いさえすれば入学できるところではなく、子供のビジョンとプレゼン能力が入試として条件づけられている。与えられるだけではない、伸びやかな限りない想像力、その種を選別されているというところか。

最近、子供を早くから学校に入れてしまうことが問題視されているという記事を目にしたことがある。子供の脳というのは大人の私たちと違ってもっと流動的で曖昧な世界観を持っている。それを発達させるにあたってもっとゆっくりと自由に育って行くべきのところを、いきなり限定された価値観を埋め込むことで後ほど障害が生まれやすいということなのだ。

『英才教育』という言葉あり、親は子供をより早く教育施設に送り込むことにやっきになっていた時代があり、未だにそうなのかもしれないけれど、今その子供達がどんな大人に育ってしまったかという事実が見える今、また時代は新しい方向へ動き出しているのではないだろうか。




日本語でこのスクールのことを紹介しているリンクがあるので紹介しておこう。ここからかなりの情報が得られる。

まとめ:インドネシア・バリ島のグリーンスクール(Green School)

ジョン・ハーディ氏のTED トーク(Green Schoolのサイトから)



学校のエントランス
圧巻的なキャンパス内の川にかかる橋
教室の一部
メインホールの建物





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