1/06/2015

ハワイの部屋探し


20年前にアメリカに引っ越して来たときは、夫を頼って来たので一人暮らしをしていたことはない。部屋探しということもしたことはない。

こちらで部屋を探す場合、多くの人々がCraig's listを利用している。私はそれに合わせて『びびなび』やAirbnbでサーチしていたけれど、現地にいない状態で部屋を決めるというのは非情に困難だということに気づかされた。部屋や大家、ルームメイトに直接会えないのは不安だけど、相手にとっても面接もできない人など完全にスルーで、返事さえしようとしない人が多い。ましてやたった一ヶ月だけのレントとなったらなおさらで、そんな感じで焦燥感は募る一方だった。

こちらからのアプローチが無理なら、自分からポスティングを載せてみようと気づき、自分を表現してみたらその日のうちにさくっとメールをよこしてきた人がいた。早速テキストでやりとりしたものの、質問の返事がこなかったりなんともらちがあかない。電話で話してしてもなんだか凄く面倒くさがりでおおざっぱな印象のオーナーだった。

とりあえず、住所と本人のフルネームが解っているので、ネットでリサーチしてみれば大体のことが把握できる。

「デポジット?いいよ。とにかく来なよ。一週間居て、嫌だったらその間に他の部屋をさがせばいいし」

写真から見るところでは条件が良過ぎて「大丈夫かよ?」といぶかしんでしまうのだけれど、多分に日本人だというところで信用されているのだと思う。とりあえずそれをバックアップにしておいて住居探しは進めていた。でも、他のところとやりとりをしても、この彼のところと比較してみると雲泥の差という気がしてしまう。ハワイの家は古い建物が多く、バケーションレンタルならともかく普通の家の間借りのレベルだと、写真を見て気持ちが沈んでしまうことが続いた。




最初にビジョンがあった。離婚をして一人暮らしを始めるときは、環境の変化のストレスを避けるためになるべく似たような住宅街の大きな家の部屋を借りて生活すると。だから、8月の2週間滞在でそれを確認してみたけれど、ハワイの住宅事情を知って甘かったかな、と思わされたのは事実だった。いずれはそうすることもできるかもしれないが、今はまだ2bedroomのアパートやコンドミニアムの部屋をシェアというのは乗り気ではなかった。

あまりお互いに連絡をとることもないまま、クリスマス前に「来るんだよね?」という確認のテキストが入り「そうよ」という感じで現地に着いた。フランス系の名前のオーナーと、予測通りで日本人の奥さんがいて、丁度彼らはガラージにいて部屋を間借りしている人と正月ののんびりした時間を過ごしている時だった。オーナー家族は別の入り口から入る更に上の階に住んでいるとのことだった。

「あぁ、あのオーシャンビューの角部屋に入るのかい?いいね」

今後半年分の荷物が詰まった重いスーツケースをハンサムな男性が軽々しく持ち上げ部屋まで運んでくれた。

5bedroom 2 full bathのそのフロアのスペースは広がりがあり明るかった。キッチンは思った程の最新の美しさではなかったけれど、アイランドに調理ストーブがあり使いやすそうだ。リビングもフレンチテイストでインテリアは好感度大。バスルームは踊れるくらい広い。

私が住む部屋に、バンブーの支柱がついて白い布が垂れている『王様のベッド』があったのにちょっと驚いた。そして一番重要なマットレスも私の背中に具合のよいふかふかさだったのに感動した。キングサイズのベッドがどーんとあるのにも関わらず、充分なスペースがまだある。他の4人でキッチンの冷蔵庫が一杯になっているので、私専用の小さな冷蔵庫が部屋に運び込まれた。東と南の壁は全面ハワイ特有のパネルが斜めになるジャロジー窓で、天窓まで二つついているとても明るい部屋だ。中古の家具で全体的にrasticというイメージでまとまっている。家具も私の家のテイストに近い。

突然飛行機のような音がしたので驚いた。なんと路線バスが目の前の道路を通っているのでその騒音だったのだ。家は高台の急勾配の坂の途中にあり、その前を通るクルマやモペットが馬力をかけて登るので、その音が異常に気になり初日の夜はなかなか眠れなかった。ベイエリアの家は無音に近い環境だったので、それがとても辛く感じられた。多分このまま住むことはできないのではないかと思われたくらいだった。




角部屋の外に視界を遮るものはないのでカーテンもついていない異常なほどの解放感。東の窓下には隣家の屋根しかなく前方まっすぐ前に水平線と小さな椰子の木の陰が見える。左手遠くにココヘッドと半島が見え、南の窓の前はKCCのキャンパス駐車場で広々としており、その向こうにはダイヤモンドヘッドが大きく広がっている。

「他の家を全部見たさ。俺のところがベストだ」

そうオーナーが言ったけれど、そうとも言えると思えてきた。4日目にクルマの騒音が確かに耳に聞こえているのに、それが神経を苛立たせなくなっていることにも気づいた。『慣れ』って凄いなって思う

朝7時11分。目覚めて何気に外を見ると、水平線から太陽が顔を出し始めたところだった。日の出のスピードは早い。朝日のまばゆい光は、じっと見つめていると太陽はその輪部を失いブルーとピンクの光を放つ。

「あぁ、人々はこれを見る為にダイヤモンドヘッドに早朝登っているんだな」

そう思ったら、なんだか可笑しくなってきた。もしかしたら、私ってめちゃラッキー?そういえば、夏のカハラハウスで悩まされていた蚊にもゴキブリにもまだ遭遇していない。ただ単に冬だからということかしら。




最初の一週間が勝負かも、と思って他の部屋を2件見てみたものの、同じ値段でげぇっとうんざりしてしまう環境だった。そしてその2件とも主要道路沿いでやっぱりクルマの音は聞こえていた。ホノルルだったらどこに行ってもそんなものかもしれない。

「It will grow on you」

英語でそういう表現がある。最初に「えぇ〜」って気に入らなくても次第にそれが好きになってくるよ、というときに使われる表現だけれど、日本的に言ったら「住めば都」なのかな。多分に、1月はこの部屋に落ち着くことになると思う。ノイズのことは考えてもみなかったけれど、ビジュアル的には考えていた生活そのものには違いがない。





東の窓から見えるサンライズ




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